ILC Supportersスペシャルトークショー「Create the Universe」後篇

先日のILCSupportersのプロモーションイベントにて行われた押井守監督、山下了特任教授、竹内宏彰氏及びタレントの藤井香子氏のトークショー、その後篇をお届けします。

前篇はこちらからご覧ください!

ILCによる「未来と展望」

藤井香子氏(以下「藤井」) 「では次のテーマに参りましょう。次のテーマはILCによる「未来と展望」です。」
竹内宏彰氏(以下「竹内」) 「先ほどのわくわくを創造するというところなんですが、私は押井守というアニメーション監督から、映像を通して未来を知ったんです。アヴァロンという押井監督の映画がVRを題材にしていたんだけど、いま世間がVRとか言ってるのを見ると「これ押井さんがやってたやつじゃん」とか思うんですね。そんな押井さんにお聞きしたいんですが、ILCが出来たらどうなりますか?」
押井守監督(以下「押井」)「目に見える形では何も変わらない。気が付いたらそこにあった、みたいな。ゲームとかと同じ感じ。むかしはピンポンみたいな簡単なものだったけど、今はもうとんでもないことになってるでしょ?」

大切なのは「出会うこと」

竹内 「ではここでVRゲームを作られた鈴木さんにお話を伺ってみましょう」

鈴木裕氏 「そうですね…。ILCはすぐにはどうこうじゃないと思います。でもみんなが夢持って集まるから、その中でいろんな可能性が生まれて、いろんなことができるようになってくる。これに付随していろんな人が来て、そういう人たちって文化とか価値観みんな違うから、そういう人たちが会うことで新しい可能性が生まれる。絶対いい方向に向かうと思っています。」

藤井 「岩手でも、子どもたちが「英語頑張ろう!」みたいになっています。」

竹内 「結局そういうことなんですよね。そういうものが日本にある、わくわくしたものを見に行こうとか、科学に興味がある人が出会うとか、そういうのが大事。自分は今オリンピックのお手伝いをさせていただいてるんですが、オリンピックでも大切なのは活躍をライブで共有し、そういうものに興味のある人が出会うこと。今の時代、ライブで会うことってとても少なくなってるから、そういう体験をする場所があることってとても大切です。

世の中に答えがあるわけじゃない

押井 「さっき先生も言ってたように、科学と技術って本来違うもの。科学は人そのもので、技術はそれが社会化されて形を持ったもの。形になる以前の科学って目に見えないし、理解しにくいんです。ニュートンやアインシュタインでさえ完全には理解できていないんだから、ILCができたからって一般の人にすぐに理解できるようになるわけじゃないし、我々の生活がどうこうなることもない。なのにそんなこと聞いてじゃダメでしょ、って思うわけですよ。」

竹内 「ぼくの聞いてたそこがダメなんだ(笑)。」

押井 「それができたらどうなるんですか、なんて聞く人がよくいるけど、それがわかってたら作んないでしょって話じゃないですか。それを知るために作ってるんだから。世の中に答えがあるわけじゃない。このILCだって先生の中に答えがあるわけじゃないでしょう、もちろん。」

山下了特任教授(以下「山下」) 「フロンティアって言葉があります。人間がやってなかったことなんだけど、そこを行こうとすると結果ってのはやってみないとわかんないわけですよ。そうやって人間ってのは進歩してきたんですね。それ辞めちゃったら人類の進歩って永遠にない。このILCってのは「地上でビックバンを起こす」ってフロンティアを進もうとしてるんですね。

こういう時、答えを求めるとその意味って薄れちゃうんですね。本当の意味では答えがないから。
だから、これは壮大な社会実験であり、物理実験であり、という側面があるんです。だけど、単にやみくもにやるんじゃ意味ないじゃないですか。できるだけ答えに近づこうと世界中で考えて、その結果選ばれたのが日本の岩手。一番答えに近く、みんなが集まれる場所と世界が考えているんです。

先ほど出会うことのすごさ、みたいな話がありましたけど、これ自分はスイスのジュネーブで痛感したんです。一万人くらいとか集まるんだけど、こんな複雑ですごいものが、人が集まるとできるのかと。そして、そこにはいろんな国から人が集まってるんです。中国韓国アメリカロシアオーストラリア…。国同士戦ってる人だって、同じ目的のためなら一緒に研究する。人類のフロンティアのためなら手を取り合えるんですよ。」

藤井 「素晴らしいですね。」

押井 「だから、サイコロを振れってことなんですよ。」

竹内 「あえて言うと、そこが良くわからない。サイコロを振れってのはどういうことなんですか? そこも含めて次のテーマ、ILC実現に向けて「私たちができること」に参りましょう。」

サイコロを振れ!

竹内 「最後のテーマです。ILC実現に向けて「私たちができること」、というわけなんですけども、まず先ほど押井監督がおっしゃった「サイコロを振れ」って言葉の意味をお聞きしたいです。」

押井 「結果を考えてたらサイコロって永遠に振れないじゃない。やけくそで振れってことじゃなくて、サイコロを振るって行為が自分が生きてるってことそのものだってことなんだよ。結局、サイコロを振らなきゃ人間は生きていけないんだよね。人間個人ってレベルでもそうだし、歴史ってレベルでもそう。人間って常にサイコロを振り続けてきた。その、サイコロを振るってことの意味を考えようってことなんだよね。」

押井 「サイコロって言うと博打ってイメージがついて回ると思うんだけど、みんなやけくそに振るってニュアンスでサイコロサイコロって言うじゃない。でも、サイコロを振るってことことはそうじゃなく、何度も言うけど自分が生きてる行為そのものなんですよ。」

竹内 「あ、ちょっとわかった。もっと挑戦しろ。自分でサイコロを振ることで自分の人生くらい自分の思うとおりに動かせよってことなんですね。」

押井 「だから何度も言ってるじゃん。」

竹内 「今やっとわかりましたぼくは。二回も言われてやっと。難しいんだもん押井さんの話(笑)。」

押井 「結局言いたいのは、サイコロを振れとかもっと博打をしろとかじゃなくて、自分のなかにあるサイコロの音を聞けってこと。」

竹内 「いま優さん(木村優さん)がすごい頷いてらっしゃったので、少し思いを語ってください(笑)。」

木村優氏 「いや、ほんとにその通りだなって思うんですよ。だって、ILCがあって、それってもちろん人類の役には立つと思うんですけど、それがどう役に立つかって振ってみないとわかんないっていうか。結果を考えるんじゃなく、今に意識を向けて、わくわくした心でこれをやってみるのがすごい重要だなって思うんですよ。学習とかもわくわくした心がないとうまくいかないじゃないですか。わたしも、高校の時とかに物理ってやった記憶全然なくて、一応やってるはずなんですけど、その記憶って全然ないんですよね。でも、最近YouTubeとか通じて物理学の講義を聞いてると理解って全然違くて、それを自分のアニメの世界に投影したりしてるんです。やっぱりわくわくの気持ちがないとサイコロは振れない。わくわくの気持ちを持ってILCをみんなに届けないといけないなと思ってて、押井さんのお話を聞いててサイコロまさに!って思ってました。」

山下 「これ(ILC)は社会実験でもあるんですよ。そもそも、ILCって日本にとっては障壁が高いものなんですね。省庁をまたいでるし、海外とも連携するような大きなプロジェクトですから。日本って小さなプロジェクトをたくさんやるのは得意なんですが、まとめてやろうとすると「一人でも反対したらやらない」ってなってしまっているんですね。こういう国ってなかなかない。だから、日本にとっては試金石だし、ここでできるかどうか、サイコロが振れるかどうかってのはものすごく大きいモデルケースになりうると思います。」

藤井 「では、いま私たちにできることはサイコロを振るってことですね!」

竹内 「ぼくもいま「サイコロを振る」の意味がやっとわかったんですが、わくわくして生きろってことかなと。人とか情報からじゃなく、自分自身で自分の未来とか子孫とか、もっと言ってしまえば自分のあったことのない人のことまで考えるってことをもっとやってみようよって問いかけな気がしますね。」

山下 「知ってもらえれば必ずファンになるプロジェクト

竹内 「そろそろ時間も迫ってきたので、最後に山下先生、押井さんから締めのお言葉をお願いしたいです。」

山下 「知っていただくことができれば、必ずファンになるプロジェクトだと思っています。そのために、まずは知ってみてください。無理やりにでも知っていただきたい。それだけです。」

押井 「ぼくの目の黒いうちに」

竹内 「山下先生、ありがとうございました。では最後に押井監督、発起人としての締めと押井守としての締めをお願いします。

押井 「発起人としてはさておいて、私個人として。さっきの動画(プロモーションイベントにて公開された動画。近日中にこちらのサイトでも公開いたします。)で5・5のぞろ目が出てて、あれをCGだと思ってる人が多いみたいなんですけど、あれほんとに振ったんですよ。一回目でぴったりぞろ目が出て、フレームに入ってくれた。
なんでもこれと同じことなんですね。最初に振ったからそのあとがある。そして、そのあとに何度やっても同じ結果は出ないんです。結果ってのは、初めに振ったその延長線上にしか起こらないんですよ。

この動画を作るとき、直感的にアインシュタインとサイコロをテーマにしました。アインシュタインならサイコロだってね。映画を作る面白さの本質もそういう部分にあると思ってます。なんでもかんでもCGで作れる時代になったからこそね、映画ってのは人間の直感、計算しきれない部分がどっかで作るものって側面があって。

サイコロを振るってところは最後の人間の砦なんですよ。誰でもみんな同じサイコロを振って生きてて、それに気づいてないだけ。サイコロを振った延長線上に自分が生きてるってのが僕の考える素粒子の世界なんだけど。

ILCの肝の部分って間違いなく「なんの役に立つんだ」って部分なんですよ。ここからしか人間はILCを理解できないと思う。日本がどう変わるか、世界がどう変わるか、どんな実利があるのか、どんな経済効果があるのか。そりゃいろいろありますよ。でも、それはおまけに過ぎない。自分がなぜここにいるのか、日本という国はどうしてできたのか、とか、いまの日本人に一番欠けてるのはそう言うことを考える部分だと思うんです。

ぼくが声かけた連中は、いわば虚業の世界に生きてる人間です。「何の役に立つんだ」って部分で生きてる人たちで、そういう人たちができることってわくわく感、まだわからないものを出すっていうことをやってる人たちです。ILCも、規模はやたらにでかいけど、でかいからこそわくわく感も大きい。間違いなく世の中は変わるよ。目に見えないところで、気づいたら変わってるはず。
ぼくの目の黒いうちに、これが形になる姿を見てみたい。これを見てから死にたい。

この年になると、これからの日本がどうなるか、もっと大きく言えば人間の世の中がどうなるか、それにしか興味がなくなります。それ以外のことはほとんどどうでもいいんです。
だから、今年の夏、ILCができるのを見届けたい。自分の人生の中ではじめての人類規模のプロジェクトな気がする。オリンピックとかの、いわゆる国家事業といわれるものとも全然次元が違う。だって、目指してるものが全然違うから。さっきの科学と技術の話で言えば、やっぱり科学の世界に生きるべきだよぼくたちは。そうすることで、技術が初めて意味を持ってくるから。

そんな風に考えて、微力ながらこのプロジェクトを立ち上げました。すこしでも多くの人にこのシールを貼ってほしいです。」

いかがでしたでしょうか?

押井守監督がILCにかけている強い思い、そしてどうしてILCサポーターズを立ち上げるに至ったのかお分かりいただけたかと思います!

そんなわくわくの詰まったILCサポーターズへの参加はこちらから! あなたも一緒に、サイコロを振ってみませんか?

また、明日(4月28日)からのニコニコ超会議に、ILCのブースが設置されます! ぜひ足をお運びください。(関連記事はこちら