ILC Supportersスペシャルトークショー「押井監督×山下教授」篇

2018-08-05T05:11:38+00:007月 1st, 2018|0 Comments

ILC Supportersスペシャルトークショー「押井監督×山下教授」篇



皆さん、本当の意味での「科学」をご存知ですか?

今回はILCサポーターズの発起人である押井守監督と、東京大学の山下了先生に、「科学」の重要性、なぜILCが日本に必要なのかなど、ILCの魅力や科学に関してたくさん語っていただきました。

国を超えて世界的な遺産となるであろうILC。
なぜ今なのか。なぜ日本なのか。
科学の話だけでなく、日本について考え直すきっかけとなること間違いなしです。
全日本人に知ってもらいたい、知っておくべき内容になっています。
是非お読みください!

※この記事はILC学生サポーターの塚本が、押井守監督と山下了先生の対談の様子を書き起こしたものです。


押井「こんにちは!映画監督の押井守です。」

山下「こんにちは、東京大学の山下了です。専門は素粒子物理学です。今日は、先日のILCサポーターズの発足式でも押井監督からお話があったのですが、まだまだ言い足りないということなので、この場をお借りして是非お話していただこうと思います!」

押井「あの時は興奮してしまい、話がまとまらなかったので、もう少し冷静に僕の想いをお伝えしたいなと思いまして(笑)」

~プロジェクトとの関わり方~

「科学と技術は異なる」

押井「ILC世界最大の電子加速器と言っても、完成したら何が出来るのか、メリットが分かりにくいと思います。学術目的の施設だから生活にすぐには直結しないし、一般の人が今ひとつ呑み込みにくいのは仕方ありません。

それに電子加速器って聞くと、どうしても科学技術を連想してしまいがちです。」

山下「そうですね。日本人の特色として、科学とは、人間を便利にするためのものである。だから科学は技術であり、その技術が何に使えるのかどれだけの経済的利益があるのか、ということを考えます。」

押井「本来、科学と技術は別のものなのですが。」

山下「日本では、科学と技術は元々違うものだと考える人はほとんどいません。科学とは本来人間の心に近い学問であり、人間が不思議に思うことや、自然に対しどのように向き合うかなど、謙虚な気持ちでスタートします。しかし、それが技術となると人間がどうやって世界を征服するか、どのようにして得をするかなど、欲を出した考えになってしまうのです。」

「科学とは人間の財産、文化である」

押井「例えばニュートンやガリレオの、重力とは何か、地球は丸いという発見は、何も生活を便利にしたわけではありません。しかし、ずっと教科書に載っていて、それが人間の財産となっています。だから、科学というのは人間の財産、つまり文化に値します。

さらに科学というのは、人間が普遍的に持っている唯一の価値観を追求するということであり、このことは芸術などと同じです。偉大な科学者というのは、人間の財産、文化を作り出し、多くの人々に評価されてきました。ところが日本人は、形になっている建築などは評価するのに目に見えないものは評価しようとしません。目に見えないものの価値観が極端に薄い気がします。

だから技術は目に見える形で分かりやすく評価できるけど、科学というのは非常に分かりづらく、どうしても評価がされにくいのです。」

「科学を誇れ、文化を誇れ」

山下「ヨーロッパの人たちは皆、自国が持つ科学という文化を誇っています。キュリー夫人やガウスなどを幼いころから見て育っているため、我々は科学の世界を引っ張っているということを皆誇りに感じています。一方日本人は科学を誇るのではなく、技術を用いていかに経済的メリットを得るか、そのことばかりを誇っています。

日本人は元々一神教とは異なり自然を征服するのではなく、自然を知って自然と共に生活しようと謙虚な姿勢でした。しかし残念なことに、日本人は一神教ではない強みを持っているのにも関わらず、ヨーロッパのようには科学を誇ろうとはしません。」

押井「ヨーロッパの人たちは生活が慎ましくても週に1回くらいは着飾って、サッカースタジアムやオペラなどに行きます。お金がなくても、オペラハウスなど自分たちが好きで大切にしているものを、自分たちで維持して守ろうとします。その行為自体が文化であり、自分たちの誇りになっているのです。」

山下「一方日本人の文化といえば、伝統芸能とあとは建築くらいしか思い浮かばないのですが。」

押井「日本の文化は、どうしても目に見えるものに限られてしまいます。京都の有名なお寺とか。どうしても目に見える建築だから分かりやすいのです。」

~日本人の文化の価値観~

「目に見えないものの価値、心の豊かさ、文化としての科学がある」

押井「戦後の日本の価値観として、経済をどれだけ豊かにするか、生活の利便性といった人類の福祉ばかりを追求して、目に見えないものの価値をあまりにも無視してきました。」

山下「最近になり、ようやく心の豊かさの重要性も言われ始めました。ただ、心の豊かさとしての科学、文化という考えはまだまだ理解が足りないように思います。」

押井「戦後の日本では、お金は稼ぐだけ稼いだけどその使い道が分からない、何に使ったら良いか考えていない人が多いと思います。モノに囲まれたけど、モノに囲まれただけで、月に1回くらいはお芝居見に行こうかとかコンサート行こうかとはなりませんでした。むしろモノの分配をめぐって争いが絶えない。果たしてこのままでいいのか不安になります。」

山下「科学とは、人の営みであり、人の営みこそが文化であると言えます。人間が新しい自然の仕組みを知った瞬間にのみ本当のイノベーションは生まれます。自然を知る、人間が営んでいくということが文化であると気づいてもらわなくてはなりません。」

押井「実際本当は、直ちに生活に関係しないもの、目に見えないものにこそ価値を見出す必要があります。そうすることで自分たちの生きる糧となるからです。何を目指して幸福と呼ぶのか、心の豊かさで言うと科学が一番分かりやすいです。なぜなら、科学は人間の素朴な疑問に答えようとしてくれますから。」

「文化は、生きているという根拠」

押井「日本では、成果が見えやすい技術ばかりが取りざたされていますが、もはや日本の技術も第一線からずり落ちかけています。経済も新興勢力に追い越されかけていて、日本が日本人として世界に誇れるものがどんどんなくなりつつある気がします。

つい、日本人はこれから何を根拠に日本人をやっていくつもりなのだろう、と不安になってしまいます。日本がずるずるダメになってしまうところなんて見たくありません。」

山下「確かにそうですよね。」

押井「今の日本は何を探して何を求めて生きていけばいいのか分からなくなってしまっています。そして、そこから抜け出すためには、人間が創りだした文化に、生きているという根拠を見出すしかありません。文化は創り出され、次の世代以降にも維持されていき、そこでは人間が生きている根拠である文化こそが我々の幸福感の基礎となり得るのです。」

「子供たちに、まずは見ることから始まる」

押井「はっきりと覚えているのですが、僕が子供の頃に、湯川秀樹さんがノーベル賞を受賞されました。その時に、やっぱり日本人ってすごいな、これからは科学が文化になるのか、と衝撃を受けました。

日本の将来のために、僕はやはり世界最大の電子加速器をたくさんの子供たちに見せたいのです。僕が湯川さんのノーベル賞受賞の時に感じたような感動を、子供たちも目撃してほしい。目に見えるものでないと納得しないのならば、大きな実験所を作ってしまおうではないか。大きい施設に驚いて、そこから見えないミクロの世界を創造するという順番は必ずしも間違っていないと思います。この大きな建物は何の役に立っているのですか?とここから話が広がりますから。」

山下「確かに初めて加速器見たとき、ええ!と驚き感動しました。なんだこれは!と。これはどのような研究で何の役に立っているのかときちんと理解させてから建設するのではなく、初めに実験所を建設してしまえば子供たちがそれぞれ自分の目で見ることができます。」

押井「この原理はノーベル賞と同じで、ノーベル賞を受賞してから彼の研究が注目を浴び始めます。しかしそれで良いのです。すごいことをやり、それを人々に見せる。ILCのことはそこから興味を持たせるしかないと思います。」

~科学の本質とは~

「妄想力の重要性」

押井「情報過多の世界で、今の若い子の覇気や野心が少ない気がして。」

山下「僕らの時代は手に入る情報が少ないから猪突猛進でこの道に進むぞって決めたらそれに信念かけて進んだのですが。」

押井「今は情報が増え一見選択肢が広がったように見えたが、実は狭めてしまっているのかもしれません。皆、誰かの道の上を歩こうとします。そうなってしまっているのが非常に残念です。」

山下「勉強するのは得意だが、もう一歩先に進んで、自分で考えるということが何よりも必要となってきます。」

押井「学問も映画も、妄想力が重要なのです。想像力とかイマジネーションとか私にとっては全部妄想に過ぎません。」

山下「偉大な科学者も初めは異常な妄想からスタートしました。疑問を持ち、妄想していたら知らず知らずのうちに真実にたどり着いてしまっていた。」

押井「例えば、アインシュタインも初めは美しい数式を求めて実証を重ねていき、結果確かにその通りだったのです。結果は後からついてくるのです。科学や哲学、芸能は美意識のようなこうだったら良いなという考えから始まり、順番が通常のものとは逆となります。」

山下「優れた科学というのは、妄想して思い込んでという作業を繰り返し行うことです。そして徐々に真実に近づいていきます。」

「しかし、宇宙の前ではとことん謙虚に」

押井「人間は異様な速度で考えてモノを作ってきました。そう考えると人間はものすごい存在であると言えるかもしれません。しかし、だからと言って宇宙の前ではどこまでも謙虚でいなければいけません。」

山下「そう!まだまだ宇宙の方が偉いです。人間の常識なんて、宇宙によってこれからいくらでも変えられてしまいますから。」

押井「まだ人間の住んでいる世界というのは、本当に狭いものです。」

山下「宇宙に対して謙虚であるということは、伸びしろが十分にあるということです。つまり、人間はまだたくさんの可能性を秘めているということを指します。」

~粒子加速器の展望~

「目に見えない、耳にも聞こえない世界を創造することにこそ人間の価値がある」

押井「人間は、ただご飯を食べているだけで幸せというわけではないでしょう。それに気づかせてくれるためにたくさんのモノを作ってきました。ILCのような大きな施設にほんの小さなビッグバン、しかも人間が数えられる時間くらいしか存在しないビッグバン。大切なのはこのことに大きな価値を感じるかどうかなんです。

子供の頃は皆宇宙に興味があったけど、大人になるにつれて興味がなくなってしまうとよく言います。しかし、これではダメでしょう。目に見える事実ばかり見ていると哲学が滅びてしまいます。

目に見えない、耳にも聞こえない世界を創造することにこそ人間の価値があります。目にも見えないし、耳にも聞こえてこない、触ることもできない、その世界を人間だけが生きることができる、それは、他の動物にはできないことです。」

山下「人間はついに、五感を超えた世界をつかんでしまいましたね。」

押井「モノを考えて作り出すことや、子供のころに普通に疑問に感じていたことなどをもっと大切にした方が良いです。」

~日本初の挑戦~

「日本人が世界に誇れるもの」

押井「ILCが出来たら、確実に日本に対して世界の見る目が変わります。世界中の科学者たちが待ち望んでいるわけですから、ILCを形にして見せてあげないと。間違いなく日本人の株が挙がります。日本人が世界の人々を少しでも幸せにできるのです。

僕は、日本人が世界に対して何か貢献した、と誇りを持って生きる人たちでいてほしいのです。」

山下「そうですね。ILCなどに価値を見出す人間が増えて、また、そのような人々が増えることが良いとされる社会に私たちの手で変えていかなければなりません。

こういう考え方も大切な文化ですから。それにILCが完成したら、科学と技術、両方の世界で日本が世界を引っ張って行くという立場になり、今まで経験のなかった名誉ある機会が訪れます。いよいよ日本が世界をリードできるかもしれないのです。」

押井「それ故ILCが出来たら、日本人ももう少し胸を張って生きていけるはずです。教科書に載るような立派な話だという自覚を持ち、日本人も世界に対したまには立派なことやってやりましょうよ。」



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