ILC Supportersスペシャル鼎談「山下教授」×「現役大学生」NO.1
~宇宙創成の謎をもっと身近に~
現役大学生がILCについて、東京大学の山下教授に色々な質問をぶつけていきます。
ILCをもっと身近に感じていただけるような内容になっていますので、是非お読みください!
※この記事はILC学生サポーターズの高島が、「ILC Supportersスペシャル鼎談「山下教授」×「現役大学生」鼎談 NO.1」の様子を書き起こしたものです。
小田桐有香(学生インタビュアー以下「小田桐」):ILCによってどんなことが解明されるんですか?
山下了教授(以下「山下」):宇宙初期の高エネルギーの反応を作ることで、宇宙創成の謎が解明されます。それによって、私たちの生活に関わる常識も大きく変わる可能性があります。
皆さんの中でも、実は今も何かが生まれては消え、それがずっと繰り返されてるんですよ、知ってましたか?
小田桐:え、そうなんですか?
山下:はい。素粒子ってずっと同じ場所にあるものじゃなくて、すごい数の素粒子が一瞬で生まれて、また消えていきます。ちなみに、皆さんの体は、どのくらいの原子でできてると思いますか?0が大体何個ぐらいつくのか、想像つきますか?
船木響吾(学生インタビュアー以下「船木」):億はありそうなので、8個くらい…?
山下:0が大体27個つきます。とんでもない数です。
皆さんの体も実はそんな小さなもので構成されていて、その一番小さいものを研究すると、宇宙の仕組みがわかったりするんです。
船木:小さいものを見ていたはずなのに、大きいものがわかってくるんですね!
山下:そうです。それで宇宙という大きい世界を研究していたら、今度は小さい物質を発見できたりもします。
小田桐:興味深いですね。そういう新しい発見をしていくのが物理学者ですか?
山下:そうです。最初は妄想の世界に近いんですけど、頭の中で想像して、それを実証し、ある段階まで行ったら次の段階のことを空想し、またそれを実証していくの物理学です。
小田桐:そうやってどんどん色んな法則が発見されていくんですね!
山下:そこがポイントで、法則は増えていくものって考えれている人が多いようですけど、本当は違います。むしろ減らしていくんです、今4つまで絞られてきましたが、それを1つにするのが最終目標です。これがいわゆる神の数式というものです。
船木:ILCの研究によってさらなる大発見がありそうですね!
山下:それを期待して、我々も頑張っています。ILCにかかる研究費用って実は高くて、国民全員の毎日の一杯のコーヒー代をいただくようなイメージです。大切な税金を使わせていただくので、それに担う大きな成果を上げていかなければいけない。
船木:ILCの技術はほかの科学研究にも生かせますか?
山下:もちろん生かせます。船木さんが学んでいる機械航空学でいうと、物質の解析を行うことで、
ダークマターを利用した、燃料のいらない宇宙船が作られる可能性が高くなります。
小田桐:ダークマターってなんですか?
山下:簡単に言えば目視できない物質です。暗黒物質とも言うんですが、こっちは聞いたことありますか?
小田桐:聞いたことはあります。
これまで宇宙の観測に使ってきたのは、主に光やX線、赤外線などの電磁波ですが、暗黒物質というのは、電磁波での観測では見ることができない物質のことです。
小田桐:ILCの研究によって、ダークマターの研究が進むっていうことですか?
山下:そうです。ダークマターの性質の解明には、現在われわれが知っている素粒子では説明ができません。新しい理論に基づく、未発見の素粒子が必要となります。宇宙創成の瞬間を再現することで、新しい素粒子の存在を見つけ、それを使ってダークマターの研究にも大きく貢献できると考えられています。
船木:理系の学生の研究のモチベーションを上げるために、一言アドバイスください。
山下:学校で習う物理は数式中心で硬いですよね?そこから離れた方がいいです。
物理というのはすごく頭を柔らかくして、常識から離れて、想像することを必要とする分野です。イタリアの物理家って若い女性や若い男性が多いんですよ。なぜかというと、イタリアってラテン系でしょ?ラテン系ってロマンを感じたり、なんか面白いなワクワクするものにすぐ飛びつくんですよ。物理の本当に最先端の物理って、まだわかっていない部分も多いので人間の想像力の世界なんです。数式は実はほとんど使わないんですよ、私たち。物理の本質は数式じゃないです。自然は数式を考えて動いてるわけではないので、数式を自然を表現したものだけのものです。
小田桐:みんなに分かりやすいように表しただけなんですね?
山下:そうです、数式で表すと正確ですしね。
ただ、本当に大事なのはその仕組みの方で、どういう意味があるのか。数式で終わってしまったら、物理なんて何も面白くない。なんでこうなるのか宇宙でいうなら、宇宙って本当は丸いんじゃないかとか、宇宙の向こう側に行ったらどうなるかとかって考えることが重要です。
小田桐:数式から離れて、仕組みを考えることの方が重要なんですね!
山下:そうです。あと実物を見にいくのも、モチベーションアップに繋がると思います。本で知識を学ぶよりも、実際飛行機やロケットを目の前で見た方がワクワクしませんか?
船木:ワクワクします!ILCが日本にできたら学生のモチベーション一気に上がりそうですね!
山下:上がると思います。スイスにLHCという陽電子と電子を円形で加速させて、研究を進める装置の研究所があって、それが作られた時も、現地の学生のモチベーションが上がったみたいですよ!
船木:そうだったんですね!
山下:あと文系理系というのも、実はあまり関係なくて、物理学者は理系だからって、日本の文化とか歴史を語れないのは良くない。ビジネスの世界でもそうですが、国際社会に身を置いた時に、文系だから理系だからという考えは捨てた方がいいと思います。理系だから数式を覚えないといけないではなく、文理関係なく、論理的な考え方を大事にした方がいいです。
小田桐:なるほど。私大学で経営を学んでいるんですが、ILCをはじめとする物理の研究は経営とどんな関係があると思いますか?
山下:ILCって国際レベルの大きいプロジェクトなので、経営的な観点、資金的な観点もとても重要になってきます。色んな国の人を相手にアウトプットをしっかりすることも大切です。そうすることでもっと可能性が広がりやすくなります。あと、人をどう育てるべきか、長期的にどんな風にプロジェクトを進めていくべきか、この辺りまさに経営ですよね?
小田桐:まさにそうですね!色々な人の協力を得るためにマーケティングをすることも大切ですよね?
山下:それも大切です。ニーズが合って、予算が合って初めてプロジェクトを起動できるので、世の中にどんなニーズがあるのか、ILCは本当にそのニーズに合っているのかしっかり考えていきます。
ニーズを感じてくれる人が一定数いると思うので、まずは知ってもらう必要があります。
小田桐:マーケティングリサーチとPRですね!
山下:そうです。宇宙の研究も実はビジネスと共通する部分がたくさんあって、どんな勉強をしていても近くに感じる共通点が必ずあるはずなので、もっと皆さんに身近なものだと捉えてほしいです。
小田桐:今日のお話でだいぶILCが身近に感じられるようになりました!今日知った知識を周りの人にも話していきたいです。本日はありがとうございました。
学生プロフィール
☆小田桐有香 東京理科大学経営学部3年
☆船木響吾 早稲田大学基幹理工学部機械・航空学科2年
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