森本晃司氏 × 山下卓氏 × 小林治氏対談 「科学とロマン」篇

2018-07-19T00:35:24+00:007月 19th, 2018|0 Comments

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「未来に思いを馳せた子供時代」

山下卓氏(以下「山下」):僕たちが子どもの頃って、テレビアニメでは松本零士さんの『宇宙戦艦ヤマト』や『銀河鉄道999』が人気だったし、本屋や図書館に行けば海外のSF小説が並んでいたし、日本のSF小説にも元気があった。ほかにも『知られざる世界※』とかサイエンス系の番組がけっこう流行っていた記憶がある。

森本晃司氏(以下「森本」):松本(零士)さんの漫画は夢があったよね。四畳半の部屋の押入れの扉を開けたら未来のメカがあるとか。ほかにも星野之宣さんの漫画はそれこそ本格SFだったし、少女漫画でも萩尾望都さんとか竹宮恵子さんとか、みんなSF的なものが基本にあった。四次元世界とか、UFOとか、未知の生物とか、知らない世界はワクワクしますよね。そういう感覚がいつからかなくなった。

小林治氏(以下「小林」):『コスモス (COSMOS)※ 』とか観てた? 天文学者のカール・セーガンが監修していたドキュメンタリー番組で、僕はかなり楽しみにしてた。人間が宇宙人と出会う確率の計算とかしていて、面白かったのが文明が生まれる確率という話。生命が高度な文明を築ける確率ってだいぶ低いんですが、その文明が絶滅する前に他の高度な生物と出会える確率って、「0(ゼロ)」じゃないけど、限りなく「0」に近い(笑)。

高島未由宇(学生インタビュアー以下「高島」):そんなに低いんですか! ほとんど奇跡のような確率なんですね。

森本:そういうこと考えると人類が出会っている生物ってすごく少ないんだよね。

 

「新しい発見は物語を変える」

小林:『コスモス』で、もう一つ印象に残っているのは、宇宙を旅して惑星が迫ってくるシーン。惑星に都市の光が見えるんですけど、急にパッとその光が消えて、カール・セーガンが「今一つの文明が終わりました」って言うんですよ。カッコイイでしょ? なんかSFだなって思いました。僕はそういうものに、大きく影響を受けていると思う。

山下:僕らが子どもの頃は文明が滅びるのもロマンでしたよね。『ノストラダムスの大予言』がいい例だけど、世紀末に世界が一度滅びるということを、ある時期の子どもたちはみんな本気で信じてた。1999年には世界が終わるんだって。

森本:そういう終末思想がベースになって、いろんな物語が生まれていたしね。大友(克洋)さんの『AKIRA』がそうだし、村上龍さんの『コインロッカー・ベイビーズ』とかもそう。『北斗の拳』や『風の谷のナウシカ』だって、一度世界が滅んだあとの物語だしね。つまり、何か大きな思想が現れると、物語って変わるんですよ。

山下:そうそう。だからアニメや小説を作っている僕たちも新しい科学的発見などと無関係じゃないってこと。例えばILCで新しい重力の仕組みが分かったとか、もう一つ新しい宇宙があるなんてことがわかったら、世の中の人達が持っている「世界観」が変わっちゃうわけで、文系だろうが理系だろうがいやおうなしに影響されちゃう。言ってみれば、恋をして人が変わる感覚と近いんじゃないかな。

森本:新しい発見に出会ったら、考え方や生活までが変わりますからね。

小林:生き方に関係してきますね。価値観が変わります。

森本:そう、まさに価値観、社会観が変わって、いろんな物事の優先順位まで見直すことになる。それこそ、エネルギーがタダになって、空気みたいな存在になってしまったら、その時に何が大切なのかとか。そうなるとたとえば、お金を稼ぐとか生活を維持するために働くとか、そういうことの次のステージに行けるんじゃないかな。

小林:食べるために働かなきゃいけないというのはなくなるといいな(笑)。そこで出て来る新しい優先順位って、それぞれの人の純粋な願いとか人生観を表していて面白そうだね。

 

「大人になるたび、根源的な世界から遠ざかってしまう」

森本:小さい頃は宇宙が終わったらどうなるか、死んだらどうなるというのが悩みのベスト10とかに入ってたんですよ。それがいつの間にかどんどん薄くなっちゃって、大人になるに連れてそういう根源的なことを考えることから遠ざかっていってしまう。今の人と昔の人の悩みも、たぶん全然違いますよね。

小林:僕の場合、宇宙がビッグバンで始まったって言うじゃない? じゃあ、ビッグバンの前には何があったのかなとか思うと眠れなくなったりして(笑)。

山下:ビッグバンって、もしかして変な実験室の真ん中で起きたんじゃないの? じゃあ、その実験室って何なのとかね(笑)。

小林:そうそう。考えすぎてヘンに夢見ちゃう感じ(笑)。原子モデルの構造と惑星の運動が似てるから、すごい倍率の高い顕微鏡で原子を見たら誰かが手振ってるんじゃないかなとか考えたり。

森本:わかります。誰かが実験室の中で宇宙を作ってて、望遠鏡で逆にこっちを覗き込んでるんじゃないかとかね(笑)。子どもの頃みんな考えてましたね。

小林:昔の東京はもう少し空がきれいだったんで、昭和五年生まれの父が子供の頃は天の川とか見えたんですよ。そうすると宇宙について考えることも多かったみたい。「悲しいことがあったら、自分はよく空を見上げた。光ってる星は恒星で、その恒星1つ1つに太陽系があって、その中に惑星の地球がある。そう思うと、人間は本当にちっぽけな存在なんだって思う。悩みなんかどうでもよくなる」って話してくれた。

塚本歩美(学生インタビュアー以下「塚本」):お父さん、ロマンチストだったんですね。

塚本:たまに世界の広さを実感するって、大切ですよね。

小林:あと、夜空に見える星の光って、僕たちの目に届くまで何十万年くらいかかってるから、今見てるあの星は実はないかもしれないとかね。そういうのロマンがあるって思う。

塚本:面白い! そういうタイムラグって不思議ですね。

山下:知識があると空を見上げただけで面白がれたり、不思議や感動が深まることもある。だから、やっぱり科学って理系の人だけのものじゃないんですよ。

高島:最初はなぜILCのような基礎科学プロジェクトに文系っぽい人たちが集まってるのか疑問だったんですけど、ようやく理解できました。

小林:ははは、それはロマンだからですよ。男の浪漫!

山下:そう、僕らは科学に夢があった時代に育った子どもたちなので。

森本:だからこそ、ILCはちゃんと現実の中で実現してほしいですよね。さらに、できればそこから始まる新たな感覚を小説にしたり、漫画にしたり、アニメを作ったり。

小林:アニメの世界は僕や森本さんもそうだけど、SF好きな人が多いから、現実の科学の進歩から受ける影響はけっこうあると思うな。

山下:SFっぽくない物語でも大きな変化があると思う。

小林:人間関係の描き方とかも実際にどんどん変わってるものね。たとえば昔は携帯がなかったから恋人と待ち合わせに苦労しているドラマが作れたんだけど、今は無理があるとか。

森本:携帯があることでまた新しい付き合い方ができる面白さもありますけどね。

小林:うん、インターネットができて国の壁がなくなるんじゃないかってちょっと期待されたけど、意外と国の壁は今もある。これでもだいぶ変わったと思うけど、もっと国境とか民族とか超えて行ってほしいな。

高島:本当にそうですよね。

山下:それこそ塚本さんが勉強している政治経済の仕組みなんかもどんどん変わっていくと思いますよ。これから起きるのは、たぶんそれくらい大きい変化です。

塚本:そうですね。もっと関心持つべきですね。

小林:二人は、宇宙とかどれくらい興味あるの?

塚本:国際社会と自分の関わりなどについては興味があるんですけど、宇宙とかになるとあんまりないですね(笑)。星を見上げたりとかはほとんどしていないです。

森本:社会が変わっちゃうくらい大切なことなので、本当は小学校で教えるべきことなんですよ。

小林:小学校と中学校の理科は面白い。高校とかになってくると数式の方に行っちゃうんで、ちょっと難しくなっちゃうんですよね。勉強ぽくなっちゃう(笑)。

 

「科学がもたらす変化とは?」

高島:単純な質問ですが、科学が進むと、どんないい面と悪い面があると思いますか?

小林:よく言われるのは、単純な労働から解放されることによって、個人の自由な時間が増えて文化的な活動が盛んになる。ピーターラビットの作者、ビアトリクス・ポターは婦人たちを家事労働から解放するための運動とかしてて、たとえば洗濯機の普及によって家事労働から解放され、自由な時間が持てるようになったそうです。そういう面ではいいと思う。

高島:なるほど。

小林:逆の面では、大好きな映画監督でチャップリンという人がいるんですけど、『チャップリンの独裁者』という映画の中で科学のことに触れていて、「科学が発達して短い時間で遠くに移動できるようになったけど、かえって人と人との心の距離は離れてしまった」って。使い方を間違えると人が不幸になってしまうのかも。

塚本:ご自身も科学の進歩に何か影響受けたこととかありますか?

小林:技術的な部分で言えば、昔は紙に絵を描いていたけど、今ではパソコンを使っていますからね。小説もそうでしょ?

山下:うん、僕が文章を書く仕事を始めた頃はワープロもなかったので、原稿用紙に手書きでした。昔は文章を書くにもチラシの裏で考えてたけど、それがワープロになって今ではパソコンですもんね。

小林:夏目漱石の原稿も、手書きだったから紙の上で自分の文章をかなり直してるじゃない? ああいうのがデジタルだと痕跡が残らなくてつまらないかな(笑)。

山下:原稿を直すのは手書きより、パソコンのほうがラクだけどね(笑)。パソコンになっても書くものは変わらないと言う人もいるけど、個人的には変わってると思う。なにより、小説が長くなりました。原稿用紙にペンで書くのと違って、やっぱり肉体的な負荷が低いから、考えをまとめて書くより、思考しながら書くというスタイルに変わってしまったんじゃないのかな。

小林:アニメーションも変わったよ。昔は撮影の段階でフィルムで作っていたから、自分が手で触れられない部分も多かったけど、今はパソコン1台あれば自分一人で全部できちゃう。

森本:そういう意味で「作家」が増えるよね。普通だったら大手の会社に行って学ぶんだけど、今では学生時代からさっさと自分で作っちゃう人も多い。「君の名は。」の新海(誠)さんもそうだけど、昔の昭和みたいに誰か師匠について学ぶとか、丁稚奉公で修行みたいな慣習がなくなりましたね。まあ、常に失われるものがあって、得られるものもあるし、変化そのものが悪いとは思いません。私はむしろ歓迎です(笑)。

山下:ここ最近って原発事故とかもあって科学のマイナスの部分ばかりが取り上げられてきた十数年間だと思うんだけど、元々はもっと夢があるものなんだよね。ILCができたら、もう一度、科学に夢を見られる扉が開かれるんじゃないかと期待してます。

小林:やっぱりロマンが大切なんじゃない? いや、漢字で浪漫です!

森本:もう一回夢を見ないとですね。

 


※トヨタ日曜ドキュメンタリー 知られざる世界:日本テレビ系列局で放送された科学をテーマにしたドキュメンタリー。1975年から毎週日曜に放送。(Wikipadiaより)

※コスモス (COSMOS) :天文学者のカール・セーガンが監修し、1980年にアメリカで初放送されたテレビドキュメンタリー。(Wikipadiaより)


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